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no title のドリアさんとクワシン交換しようぜ!ってなって書いたシャアシンです。付き合ってません。






「大佐も食べますか?」
 揚げたてのカレーパン。宇宙生活が長く手の込んだ料理とは無縁だったストレスだろうか、地球に降下した甲児が食堂を占拠して始めた揚げ物大会は終わりが見えない。今も鬼気迫る様子でカレーパンを揚げつづけ、その後にはドーナツの生地を持ったバナージが控えている。
 装飾の多いネオ・ジオンの軍服を身にまとったシャアが感慨深そうにその様子を見ていたのでシンはつい手に持っていたカレーパンを差し出した。シャアの背後ではヒビキがゲソ天をかじりながら目を丸くしている。
「ふむ、いただこうか」
 長身の男がわざわざ背をかがめてシンの手ずからカレーパンを食べる姿にアマタとゼシカがあんぐりと口を開きミコノが頬を染めた。更にその後ろでは腐食力が全開になっているがいつもの事なので放っておかれる。
「アクシズは食事がおいしくなかったって聞きましたけど、どうでした?」
 もぐもぐと咀嚼しているシャアを見上げ小首を傾げて問いかけたシンはその行為自体に疑問を持っていないようだ。やたら近い顔の距離にどぎまぎしているのはどうやら新規参入したメンバーだけで、あのシンに過保護なカミーユも反応していない。
「ギュネイか。あぁ、確かにあまり美味いものではなかったな」
 赤い舌がぺろりと薄い唇についた油を舐めとり、それでも取りきれなかったパンくずを手袋を外した太い親指が払った。もう一口、食べやすいようにシンがパンを持ち上げるが、アイコンタクトだけで手を降ろさせた二人を見てかなめがどん引きしている。
「宇宙の食糧事情はあんまり改善されてないですもんね。フロンティアとかに行けば別なんでしょうけど」
 手袋をはめなおしているシャアに笑いかけ手に持ったカレーパンを口に運ぼうとするシン、半分ほどの大きさになっているそれに齧りつけばカリッと揚がったパン粉が唇の端を汚した。薄い頬を膨らませて口いっぱいにパンを頬張る姿は戦闘中とはかけ離れている。
「シン、食べかすがついているぞ」
 白い手袋につつまれた人差し指が自分の顔を指さし汚れている個所を示す。赤い、大きな瞳がきょとんとしてシャアを見上げ、白い指が口の端をぬぐった。だが今一つ場所がずれている。
「じっとしていろ、袖に油が付くと困るだろう」
 先ほどはめなおした手袋をわざわざ外し、シャアの骨ばった皮の分厚い指が、シンの白く薄い頬を拭った。香辛料の刺激で赤く色づいた唇を優雅な指先がかすめるが当人同士は全く気にしていない。
 ちなみに腐食力の暴走がひどすぎるサザンカは、先ほどからカイエンとシュレードの両名に取り押さえられている。それはそれで「親友萌え!」と叫んでいたので本人は幸せなのだろう、その前は「年の差萌え」だった。体格差じゃないか、と小さな声で突っ込みを入れた人物をサザンカが目を血走らせて探していたが些細なことだ。
「もう、そんな子供じゃないんですけど」
 ようやく口いっぱいに頬張っていたカレーパンを飲み込んだシンがむっとしたように唇を尖らせる。そのあまりに気安い、甘えたような仕草にシンジがぽかりと口を開いてレイは何事かを覚えたかのように小さく何度も頷いた。
 普段はそれなりに戦歴の長いパイロットとして新しく加入したメンバーの世話をしたりすることもあるシンがそのような態度をとるのはアムロとカミーユ相手だけではなかったのか。
「そう思うのなら口いっぱいに物を入れるのはやめる事だ。随分成長したと思ったが、まだまだだな」
 含み笑いをしながらもシンを見下ろす青い目はひどく優しかった。黒々した睫毛に縁どられた大きな瞳が何度か瞬いて照れたように伏せられる。
「そうですよ、まだまだなんです。でもあの言葉は本当だから、ちゃんと止めに行きますよ」
 それぐらいの力はつけます、そう言い切ったシンを見下ろすシャアの顔は満足げだ。
「ところで大尉、ちょっと痩せたんじゃないですか?ちゃんとご飯食べないとだめですよ」
 このあたりなんて、と言いながらシンの手がシャアの腰を探るように掴む。なぜ以前のウエストがわかるのか、や厚い軍服の上からどうやって見抜いたのか、など聞いてはいけない。
 シャアも元部下の唐突な行動に慣れているのか好きにさせていた。











「ご存知ですか、アムロ大尉。あれであの二人自覚ないんですよ」
 こそこそと食堂の隅で動向を見守っていたカミーユがげんなりしたように呟く。彼にとってシンは親友であり、兄弟のような存在で大事な人だ。
「あぁ、だが逆に考えてみろ。意識しだせばシャアは容赦しないぞ。そうなれば俺たちの面倒事が増えるばかりだろう」
 ため息をつきながらから揚げを頬張るアムロは諦めたように中空を見つめていた。

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