×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
バナージの持っている一升瓶には保護者の手で炭酸水が詰められています。カミーユとシンは無印からの時間経過で成人しているという事でお願いします。
アムロは黙って缶ビールのプルを引いた。目の前の惨状はいつかのZEXISでの宴会を思い出させ忍び寄る金色の影を振り払った。楽しくなくはない、相変わらず青山はへべれけに酔っぱらい赤木に絡み、スメラギによって死体の山が築かれている。
ローティーンの子供たちは早々に部屋に戻らせ、少女たちは部屋の隅の方で固まってガールズトークに興じている。
「だからっ!なんでそんなにいろっぽいんですか!!」
呂律のまわっていない幼さの混じる声が聞き捨てならないことを言い出してアムロはビールから唇を離した。
見ればぐすぐすと鼻をならして目元をこするバナージがシンの対面に座りこんで一升瓶を抱えている。胡坐をかいているシンの太ももには幸せそうな顔をしたカミーユの頭が乗せられており、アムロ同様ビールを持っていない方の手で柔らかい髪を梳いていた。
「それも!かみーゆさんばっかりずるい、おれにはいっかいもしてくれないじゃないですか!!」
話の脈絡がないが酔っぱらいだから仕方ないだろう。絡んでくるブライトをかわしアムロは静かに会話がよく聞こえる場所に移動した。
「ずるいってなんだよ。俺だって普段はこんなことしてないだろ」
シンは素面なのだろうか。ビールを飲み干してバナージに困った顔を向けているが顔色はいつも通り青白く口調も明瞭だ。
「だいたいカミーユの方が付き合い長いんだし、しょうがないだろ」
やれやれと首をふる動作に微かな違和感。シンは不器用だが他人を思いやれる優しさはある
それがこの状況でバナージをあおるようなことを言うだろうか。言うかもしれない、なんせ不器用だ。
「カミーユと仲良くてずるっていうんならバナージだってそうだろ!俺相手にユニコーンの武装とか聞いてこないし相談だってカミーユばっかり!」
雲行きが怪しい。よくよく見ればシンのざんばらに切られた髪の隙間から見える耳の先がほんのり色づいている。
「だってシンさんとしょうめんきってはなすとかきんちょうするし、なんかやたらいい匂いするし、腰細いし」
相変わらずぐすぐすと鼻をすすっているがそのまま一升瓶をラッパ飲みするのはどうなのだろうか。人の恋路に首を突っ込むと馬に蹴られてしまうのでアムロは酒のつまみにしつつ黙って聞いていた。
「なんだよそれ、そんなことで俺を避けてたのかバナージ!」
甲高い音を立ててビール缶が床に置かれるが混沌の坩堝と化した宴会場ではまったく目立たなかった。
「俺だってなぁ!そのもふもふした頭とか撫で繰り回したい。カミーユがいつもしてるみたいに肩寄せてみたい!ていうかカミーユとお前の間に挟まりたい!」
カミーユ、モテているな。相変わらずシンの膝の上で幸せそうな顔をしているカミーユをちらりと見る。心なしか口角が上がっている気がしてビールを置いたことで自由になった片手がバナージに伸ばされふわふわとした猫毛を撫でた。
「し、シンさん」
泣きはらした目がとろんとしている。寝落ちるな、と思った瞬間糸が切れたようにシンにもたれ掛るバナージに苦笑して一升瓶を回収するために腰を上げた。
「両手に花だな、シン」
くつくつと喉の奥で笑いながら話かければ酒精にうるんだバーミリオンがわずかに細められ、てらりと光る薄い唇が弧を描く。
「どっちも俺のです。あげませんよ」
僅かに眉を上げアムロも微笑む。そんな面倒事は一つで十分だ。肩を竦めて返しバナージの手から一升瓶を取り上げた。
PR
この記事にコメントする
ブログ内検索
フリーエリア