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Pixivにまとめていたものとかツイッターに放流していたものとかいろいろです。

基本的にクロウと甲児が二人旅していろんな人と出会ったり戦ったりします。剣と魔法とMSのなんかよく分からない世界観です。




 赤い瞳に青白い肌、痩せぎすの体に上等な布で作られた白いワンピースがよく似合っていた。デレデレとにやけるクロウの頬をつねり上げ持っていたマントをきせかける。
 旅の途中、立ち寄った村にて峠に山賊が出ると聞いた二人は通り道でもあるということで退治を申し出た。黒々とした大きな全身鎧を身にまとった甲児と長大なマスケットを担いだ軍人上がりのクロウが村人たちの期待を一身に背負い出発したのが今日の朝。今は昼を少し過ぎたころで件の峠にてむせかえる血の臭いに駆けつけたところだ。
 果たして、辿りついてみれば破壊された馬車に、魔物に食い荒らされた山賊の死体が散乱しひどい有様だった。それほど腐敗が進んでないため今朝か昨夜襲われたのだろう。
「君、名前は」
 そんな惨状のなか草陰で見つけた檻の中に入れられていたのがこの少女だった。この山賊たちは人さらいもしていたのかもしれない。それなりに立派な作りだったろう馬車は壊れて使い物になりそうにないが。
 ぷるりとした赤い唇が小さく開く。だが空気が漏れる音がするばかりでそこから意味のある言葉は零れてこない。声が出ないのは魔法か、道具か、少女も驚いたように自分の首に手を当てた。細い首に嵌められた似合わない首枷を細い指が引っ張るがそんなことで壊れるものでもないだろう。
「こりゃ奴隷用の拘束具だな、手足のもんがつけられてないだけ良かったが」
 クロウが顔を寄せてまじまじと少女の首筋を見る。黒髪の隙間からガーネットのような目が縋るように鎧の甲児を見上げた。先ほど鋼鉄製の檻を引きちぎったその膂力に期待しているのかもしれない。
「無理矢理壊せばそのまま魔方陣が焼きこまれる仕掛けになってる。どっかの奴隷商かそこそこの魔術師に頼まなけりゃもう二度と声が出せないぜ。やめた方が無難だ」
 やれやれと肩を竦めるクロウに甲児は伸ばしかけていた手を引っ込めた。俯いた少女の折れそうに細いうなじに食い込む黒々とした枷が痛々しい。
「字は書けるか?名前は」
 冷静に問いかけるクロウに少女は少しだけ考え込んで右の人差し指と親指で小さな幅を示して見せる。それから地面にしゃがみこんで砂の上に『シン』と書いた。
「少しは書けるって事か?とりあえずここを離れようぜクロウ。鼻が曲がっちまいそうだ」
 鎧越しのくぐもった声にクロウが首肯し少女が困ったように眉を下げる。
「こんな所に置いて行ったりしないよ。とりあえず俺たちと一緒に麓の村に行こうぜ」
 ほっとしたように表情を緩めたシンに手を差し伸べふとワンピースから伸びる足元に視線を落とす。桜色の小さな爪に彩られた素足、どこもかしこも柔らかそうで小作りな少女をこのまま麓まで歩かせるわけにはいかない。
 甲児はゆっくりと鎧を操作して膝をついた。きょとんとしたように立ち尽くすシンに笑いながら手を伸ばす。
「裸足じゃ危ないからさ、俺が抱き上げて運ばせてもらうよ。クロウ一人でもこの辺りの魔物くらいなら蹴散らせるから心配するなよ」
 戸惑うように赤い瞳がクロウを見上げた。にやりと笑ってマスケットの包みを剥いでみせるクロウにつりがちな大きな目が驚愕に見開かれる。バーミリオンに一瞬だけよぎった剣呑な色に気付かず甲児は得意げに胸を叩いた。
「俺だって、君一人くらい守りながら戦えるさ。マジンガーが一緒だからな」
 フルフェイスの兜のため表情など見えないだろう。だが振り返ったシンは恐る恐るという様子で甲児の腕に身を委ねる。思っていたよりもずっと軽い身体を揺らさないように立ち上がり甲児はクロウを見た。
 奥歯に小骨が挟まったような何とも言えない顔をしていたがクロウもまた苦笑してマスケットを仕舞いなおす。
「夜になったらこいつらアンデッドになりそうだな。急いで降りようぜ」
 アンデッドになったところで朝日を浴びて勝手に消えていくだろうが骨と腐った肉相手に肉弾戦を挑むのはごめんだ。
 来た時よりも些か早足になって甲児とクロウは連れだって峠を下って行った。





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