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ツイッターでぼろぼろやってたクロロク甲。続きます。





 ライフルを構える肩は随分薄かった気がする。豊かなバストにきゅっと引き締まったウエスト、クロウの好みからは外れていたが十分に魅力的な女だった。 
 少年たちの面倒を見る姿やハロと戯れ少女の相談に乗る時は随分と女性的に見えたが一人称は俺で、一人で居る時の行動はがさつだった。そのちぐはぐさが、クロウの警戒心を薄れさせたのかもしれない。 
 スナイパーの命とも言える目を負傷し、顔に消えない傷を刻まれたその後もあの女は笑っていた。 
 困ったように、ほんの少し眉を下げルージュを引いた唇の端を持ち上げて。

 女に手を伸ばす。パイロットスーツに包まれた細い肘を握り引き寄せれば簡単に腕の中におさまった。 
 オイルと硝煙のにおいの染み付いたブラウンの髪に鼻先を寄せ柔らかいしたいを堪能する。

クロウ 

 女は淡々とした声でクロウの名を呼んだ。温度のないそれに悪寒が走り体を離す。生気のない顔、グリーンの瞳は虚ろで、ただよく知った微笑みだけを浮かべている。 

クロウ
 
 二度目の呼ぶ声は突き放しているように聞こえた。

 見知った部屋だ。ワンルームにシャワーとキッチン、安いだけが取り柄の新しい寝床。 
 飛び起きるでもなくクロウは見開いた目から力を抜いて、大きく息を吐いた。 
 夜明けにはまだ遠い、枕元に放り投げていたモバイルを手に取り一番上に登録してある番号へ電話をかける。
 3コールめで電話の向こうに驚いたような声が聞こえた。 
『クロウ?どうしたんだ今そっちは深夜だろ?』 
 日本にいる甲児は学校が終わった頃だろうか。はきはきと、活力に満ち溢れている声に深いため息を吐いた。 
「あぁ、悪いなちょっと寝れなくてよ」
 成長途中の細い体。まだ抱きしめたことすらない幼い恋人を脳裏に描き夢の残滓を振り払う。 
『怖い夢でも見たのか?』 
 優しげな声、きっと柔らかく微笑んでいるんだろう。あの女の作り物のような笑顔と違って心から。
「・・・あぁ。そうだな怖い夢だった」 
 素直に告げれば困ったような唸り声が聞こえる。 もうほとんど心は持ち直していたので、通話を終わろうかと思っていたのだが。 
『そっちに行ってやれればいいんだけど・・・まだ休みに入らないしな』
 目をまたたかせて言われたことの意味を考える。にやけはじめた口元を誰も見ていないと言うのに手で覆い隠し小さく笑った。 
「大丈夫だ。だからお前は日本できちっと勉強してな、甲児。愛してるぜ」 
純粋な好意。裏も表も女の欲もないその言葉だけで胸の内があたたかくなる。
 電話口の向こうで照れ隠しに悪態をつくその言葉すら可愛らしく瞳の裏にこびりついた冷たい碧の目を振り払った。





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