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ツイッターであんまりにも可愛いネタをいただいたのでつい。
 カミーユとシンとアスラン。


 アスランからの相談は大体において面倒くさい。露骨に表情をしかめながらカミーユは学食のカツ丼を見下ろした。
 
 併設されている大学に通うアスランたちと知り合ったのは偶然で、できれば薄い知り合い関係でいたかったのだがそうもいかないらしい。なぜかと言うならカミーユを学食メニューの中では割と高値のカツ丼で釣り、相談をしている目の前の男が同居人と犬猿の仲だからだ。毎度毎度こんなものでとは思うのだが食べ盛りの胃は拒否を許さなかった。
 割り箸を使ってさくさくの衣に包まれた豚肉に噛り付きながら長いまつげを悩ましげに伏せる少しだけ年上のアスランを見る。
「シンにいつ電話をかけても留守電なんだ…」
 至極どうでもいい。そもそもなぜそんなにも電話をかける用事があるというのだろう。少しだけ不機嫌な気持になりながら出汁のきいた卵と米粒をかきこみあつい麦茶で流し込む。
「…まぁ、シンも俺と同じで自分で学費稼いでるからそんなに暇じゃないんじゃないか?」
 同じ家で寝泊まりし、同じ店でバイトしているがそれだけでは到底賄えない。カミーユは親の残してくれた財産のおかげで大学までは楽に通えるのだがシンはそうではないらしい。
 深く突っ込んだ事情まではきいたことがないが同居を始めた頃の荒みきった赤い目を思い出しながら嫌々答える。
 平日も休日も学校に行ってる間以外はほとんどバイトに出ているシンは忙しい。
「俺もそうだろうと思ってたんだが…この間俺が電話したすぐ後にキラが電話すると出てたんだ」
 思わず箸を止めて項垂れるアスランを見た。何をやってるんだ、この人の幼馴染が人畜無害なのは顔だけだろう、顔に出さないままあきれ果て再びカツ丼を消費する作業に戻る。
 犬猿の仲だと思っているのはシンだけでアスランは仲良くしたがっているというのは二人を知る者たちの共通の認識だ。ただ、アスランが壊滅的に空気を読めずシンも思い込みが激しいので二人が、たとえば今のカミーユとアスランのように昼食を共にすることはいつになるやら。
「…とりあえず、今電話してみたらどうだ?昼休みはたぶん携帯持ってるだろうし」
 カツ丼代くらいは仲介してやってもいいだろう。アスランに電話を掛けさせて留守電にカミーユがメッセージをいれればさすがにとるはずだ。
 アスランは眉を八の時に下げたままのそのそと携帯を取出しシンの番号を呼び出す。留守電になれば渡せと言いながらお茶のおかわりを入れて口にいれる。念のためにスピーカーにしてもらって留守電になるのを待った。
 何度目かのコール音の後にぷつりと繋がる。
「あ、シ『はい、シンです。ただいま留守にしています。ご用のアスランはピーという発信音の後に爆発します』」
これは。
 アスランは完全に固まっている。カミーユもついふきだしそうになるのを耐えて唇をかみしめた。完全に空気が凍っている。
『ピーッ』
どう聞いてもシンの肉声だ。
「あ、ぇ…ど、どかーん…」
反射だろうか、真面目に言い放ったアスランを見てもう、駄目だった。盛大にふきだしたカミーユは腹を抱えて机に突っ伏する。
 ようやくからかわれたことに気付いたのだろう、仄かに頬を赤くしたアスランが同じく電話口の向こうで笑い転げているシンに怒鳴りつける前に通話が切られた。わなわなと口を震わせるアスランにカミーユは珍しく満面の笑みを向けて滲んだ涙を払った。
「なんだ、結構好かれてるんじゃないか」
「そんなわけあるか!あいつ…!!」
 あの人見知りが、どうでもいい他人にこんないたずらを仕掛けるわけがない。案外、シンがアスランを避ける日々の終わりは近いのかもしれないと、カミーユは未だ治まらない笑いを押さえて再び机に上半身を預けた。


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