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 いろんな恰好をさせたいと思うんですがセンスが来い。やっとガエアイらしくなってきました。ちょっとだけクワシン。




 アインは頼りなげに膝上で揺れるスカートに目を落としそっと前を行く大きな背中を見上げた。隣では小さな紙袋を手に持ったシンが足取りも軽く歩いている。袖のないパーカーにスキニーパンツをはいた姿は少年のようでもあった。格別の美少年だが。
 きっかけは些細なことであったように思う。常の様にシミュレーターにて叩きのめされたアインがいらだたしげに端末を覗いていると思いついたようによく通る明るい声が「気晴らしに行こう」と言い出したのだ。何を、と問う間もなくさっさと着替えに行ってしまったシンがアインの上官に地球降下の許可が下りないのは理解したのでせめて近くのコロニーに出かけたいと初めて嘆願した。
 最近何かを考え込んでいた上官はそれは名案だとでも言いたげな表情であれよあれよと言う間に予定をたててしまい、何故かアインは彼の護衛として月基地近くのコロニーへシンを伴って出かける準備が整えられた。
「そういえばお金がない」
 前日の夜になって呆然とした顔で言い出すシンに何をいまさら、とアインは目を瞬かせる。驚いているアインをよそに整った顔をむっつりとさせ考えこむシンは真剣だ。幾ばくかの現金を与えるべきだろうかとちらりと財布を見やって気にしていないように端末に視線を戻す。
 今までは幸いと言うべきか金銭を使う必要がなかったため思い至らなかったのだが、同世代相手に子供にやるように小遣いを与えるのもいかがなものだろうか。ベッドの上で唸っているシンを見ていると少しだけ可哀そうになってきたのでアインは仕方なしに脱いでおいた上着を手に立ち上がった。
 胡坐を組んでいるつま先を睨んでいたガーネットがぱっとアインを見る。
「少し用事を思い出しましたので先に就寝しておいてください」
 返事を待たず部屋を出てロックをかける。これで中からも外からも出入りはできなくなった。汗も流したし必要なものはすべて部屋にそろっているので問題ないだろう。シンが一人で移動することは禁止されていた。本人へこの説明をした時あっけらかんと独房じゃないだけましだなと言い放ったのでいったいどんな道を歩んできたのだろうと少し呆れたものだが。
「ボードウィン特務三佐、夜分遅くに申し訳ありません。アイン・ダルトンです」
 高級士官用の居住区のさらに上等な部屋の前で呼びだしを押しながら待つ。まだ訪ねるのに不躾な時間ではなかったが規則正しい生活を送っている上官は既に寝支度を整えているだろう。申し訳ない気持ちになりながらもすぐに開かれた扉の向こうに立つ長身を見上げた。
「どうした?こんな時間に」
 品のいい薄手の寝間着を着たガエリオが微笑んで見下ろしてくる。ほんのりと香る上質な石鹸の匂いを思考から追い出して背筋に力を入れた。
「はっ。少々確認していただきたいことがございまして」
 真っ直ぐに水色の瞳を見上げれば入室するように促される。何度か足を踏み入れたことはあるのに硬い軍靴の裏に感じる柔らかいカーペットの感触にはどうしても慣れなかった。
「シュヴァルベの調整の件なのですが」
 端末に資料を表示して差し出す。常と違う手袋をつけていない指先がアインの手の甲をかすめ受け取る。手袋越しの接触に心臓が一つ跳ねたが表情は変えずに手を背後で組んだ。
 一つ二つ貸し与えられた機体への報告をし返答をもらえばそれで用意した用事はしまいだ。高い位置にある澄んだアクアマリンが細められ薄い唇が笑みの形に引き上げられる。
「それで、何かほかに用事があったんだろう?言ってみろ」
 口実を見抜かれていたことにばつが悪い思いをしながら視線を巡らせる。察しのいい上官が目を輝かせ笑って待っていた。
「申し訳ございません。あの、アスカさんが現金を持っていないというので…。いくらか私の方から渡しておきましょうか?」
 彷徨わせていた視線だけをちらとガエリオに向けると先ほどの笑みはどこへやら何とも言えない表情でアインを見下ろしている。
「お前…いや、そうか。そうだったな」
 長い溜め息と共に吐き出された言葉は呆れているような、どこか安堵しているような不思議な色を帯びていた。ガエリオはがっくりと肩を落としデスクの方へ歩み寄ると引き出しから一通の封筒を取り出す。
「マクギリスからだ。捕虜ではないのだからそれ相応の対価を渡すべきだとな」
 ぽんとアインの手の平に置かれた封筒は分厚い。本来であれば口座の方へ振り込むか小切手で渡されるのだろうが異世界の住人であるシンが身分証を必要とするそれらを利用できるかと言われれば答えは否だ。
「渡しておいてやれ。あぁ、それと」
 電源を落とされた端末が返され封筒と共に片腕に抱く。相当な金額のはずだがこんな軽々しく預けられていいものだろうかとも思うが相手はセブンスターズの御曹司、金銭感覚が自分とは違うのだろうとアインは黙って言葉を待った。ガエリオの真剣な瞳がアインの頭のてっぺんからつま先までを眺めて視線を合わされる。
「お前は明日もその恰好で行くつもりか?」
「はっ!自分は特務三佐の護衛でお供させていただきますので」
 そもそも軍服以外の服をあまり持っていない。せいぜい軍服では都合が悪い場合のスーツとトレーニングウェア、当たり障りないシャツとスラックスくらいのものだ。
「それではギャラルホルンだと喧伝して歩いてるようなものだろう。いい機会だ、少しは着飾ってみせろ」
 呆れたように言われた言葉にアインはあからさまに動揺ししっかり持っていたはずの端末と封筒を手から滑らせかける。慌てて両手で押さえれば珍しいものを見たというようにガエリオが片眉を上げていた。
「それは…ご命令、と言う事でよろしいでしょうか…」
 顎を引いたままちらりと仰ぎ見れば薄い唇が引き結ばれ、いらだたしげにセットされていない柔らかなラベンダー色の髪をかきまぜる。
「そうではないが、そう言わないとお前はその上着だけを脱いだような恰好で来るんだろう?」
 見抜かれている。だが、どうすればいいのだろう。まさか葬式用のスーツで行くわけにもいくまい、そしておそらくガエリオの言う着飾った格好の最低基準はスカートだ。実際はそうでもないのだがアインはそう思い込んでいた。
 戦闘中とは違う嫌な汗で手袋が湿る。
「…まさか私服を一枚持っていないなんて言わないな?」
 あからさまに狼狽するアインを見て引き攣ったような笑みを浮かべるガエリオに観念したように顔を向ける。それだけで悟ったのだろう、優美なつくりの顔を失望の色に染めるのは忍びないがアインは謝罪しようと口を開きかけた。
「いや、すまん。謝罪はいらない、そうだなお前はそうだったな」
 優しげな微笑みと向けられた手のひらに言葉を飲み込むしかない。当初の目的は十二分に果たしたのだからこれ以上上官の私的な時間を割かせるべきではないと退室の許可を求める言葉を唇に乗せると裸の指先がアインの頬をかすめ先ほど乾かしたばかりの前髪に触れた。
「お前はただ真っ直ぐ目的だけを見ていればいい。それが終わった頃に、いつでもいい、いつか」
 アインを見下ろすあおい瞳にはただ慈愛だけが宿っている。与えられる厚情を返せないことがひどく申し訳なく、心臓がわし掴まれたように痛む。アインは顔を上げていられず頭を下げる。
 あっさりと部屋の外へ出たアインは駆けると言っても過言ではない早足で自室へ向かった。
「アスカさん。すいません、少し頼まれていただけませんか?」
 端末を自分のベッドへ放り投げたアインの剣幕に、胡坐をかいたままうつらうつらしていたシンは飛び起きる。僅かに熱を帯びた深い青の瞳は真剣でそらす事など許されないようだ。
「あ、あぁ!俺に出来る事なら!?」
 




 翌朝、普段の定刻よりも随分遅い時間にシンを伴って現れたアインにガエリオは言葉を忘れ、こぼれんばかりに目を見開いて驚いた。シンは少しだけ眠そうにしている。
「あの、何か失礼がありましたでしょうか」
 穴が開くほどじっと見られ居心地が悪い。身じろぎして口を開いたアインにガエリオがようやくはっとしたように瞬きをした。次いで、大輪の花の様に笑う。それだけで夜中に駆け回った苦労も報われるというものだ。実際駆けたのは格納庫の施錠する時間が迫っていると部屋を出た時だけだったが。
 シンの私服は軍服の派手さに比べ随分とシンプルだった。オフホワイトのパーカーに単色のロングTシャツ、スキニーパンツとかかとの低いブーツは起伏の少ないスタイルによく似合っているがボディバッグと相まって年齢よりも幼く少年の様にも見える。ガエリオは落ち着いたブラウンのカジュアルスーツで元来の色彩の派手さが品よくまとまっていた。
「アイン!お前はいつも俺の予想の斜め上をいってくれるな!!少し待っていろ!」
 言うなり跳ねるようにして自室に戻った上官の背を見送ってどうやら合格点だったらしいと胸をなでおろしていると耐え切れないとばかりに隣から押し殺した笑い声が聞こえる。
「あの人ほんと子供みたいだな。よかったなダルトン三尉!いや、今日はプライベートなんだしアインって呼ぶぞ」
 ボディバックの留め金をいじりながら自然な様子で立っているシンが目を細めて微笑みかけるのにアインもまた微かに頬を緩めて返した。
「ありがとうございます。特務三佐の御期待に沿えたようで」
 どうにか持ち合わせていた濃い群青のジャケットにシンが引っ張り出してきたハイウエストの黒いスカート、シャツだけはどうにも用意できず軍務の時に着るものだがおろしたての糊のきいたものだ。見た目だけは取り繕えただろうか、と胸をなでおろしているとすっと目の前の扉がスライドして上機嫌のガエリオが戻ってきた。
「ずっと頑張っているしな、ご褒美だ」
 動くなよ、と言われ気をつけの姿勢のままジャケットの襟に触れるガエリオを見る。身をかがめているためセットされた前髪が頬をかすめくすぐったい。
 シンの呆れ顔にも気づかずガエリオが身を起こしたあと胸元には慎ましやかな青い貴石のついたブローチが飾られていた。ぎょっとして身を引くアインに構わず上機嫌のまま上官は歩き出す。
「特務三佐!?いただけませんこんな」
 反射的に軍務中と同じ位置で付き従いながら口を開けば肩越しに振り返ったアインよりも色の淡い瞳が嬉しげに笑みに細められていた。
「ご褒美だと言っただろう?お前が要らんと言うのなら捨てるしかないが」
 悪戯を思いついた子供の様に笑う顔は拒否を許していない。助けを求めるように隣を歩いているシンを見れば何を勘違いしたのかボディバッグから小さな冊子を取り出してこちらも得意げに笑っている。
「このコロニーには商業施設以外にも遊園地とかあるらしいですね!」
 どこで調達したのだろう、情報誌の類を取り寄せる手段などシンにはないはずだ。呆れたように肩を竦めたガエリオが差し出される冊子を受け取ってぱらぱらとめくる。
「あぁ、他にも地球の環境を模した植物園なんかもあるな。ところでお前、どうやってこれを用意したんだ?」
 ガエリオも同様に疑問に思ったのだろう僅かに真剣みを帯びた瞳にブローチを返す事など言いだせずアインは黙ってシンを見た。
「特務三佐と三尉をコロニーに連れ出すって話を整備長にしたら快くくれましたけど…」
 きょとんとしている赤い目は嘘をついていない。唇をへの字に曲げたガエリオは一瞬不満そうな顔をしたがすぐに諦めるようにため息を吐いた。
 話について行けていないのはアインだけのようだ。すれ違ったヴィルムで同乗していたクルーがぎょっとした顔でなんとか敬礼するのに鷹揚に片手をあげて返すガエリオに付き従いシャトルへの扉をくぐった。
  明るく清潔な街並みはどこも新鮮に目にうつる。子供の笑い声や仲睦まじく寄り添う夫婦を横に見て傍目にはそうとわからないくらいそっと頬を緩めた。アインの想像よりずっと広大だったコロニーは士官学校時代居住していたところとは雲泥の差だ。
 午前中にまず立ち寄った植物園で、地球出身だと言うシンは意外にも花に詳しく生まれて初めて触れる生花に緊張するアインを笑って花粉のついた指先を拭くようにとハンカチを差し出してきた。淡いグリーンのハンカチはシンが持つには少し違和感がある。不思議そうなアインに少しだけ大人びた顔をした彼女はもらったんだと苦笑した。
 時間はそれほどない。スタンドで買ってきたホットドッグは温かく、歩きながら食べる行儀の悪さを良しとしなかったガエリオがベンチに座って齧りつくのを少し意外に思いながらアインもまた口をつけた。ぱりっとした皮にあふれてくる肉汁、刻んであるピクルスも目の覚めるような酸味で目を白黒させるアインをガエリオは嬉しそうに見下ろしていた。
 ガイドブックによれば地球から輸入している本物の肉を使用しているらしい。ぜいたく品ですね、と真面目くさった顔で言えば二人が声を上げて笑った。
 穏やかな時間だと思う。胸の内に燻る焦燥が燃え上がるたびにガエリオがあの優しい瞳で見下ろしてくるのでアインはどうにか消化してやり過ごした。
「アイン、お前何か欲しいものはないのか?」
「いえ、特には」
 腹を満たし、商業施設を見て回る間頻繁に問いかけられる言葉に生真面目に答えるアインにガエリオは困ったように微笑みかける。結局返す事の出来なかったブローチだけでも分不相応な贈り物を頂いたというのにこれ以上上官の好意に甘えるわけにはいかない。本当に欲しいものがなかったのも理由の一つではあったが。
 欲しいのはあのネズミたちの首だけだ。
「身の回りの物に不足はありません。どうぞ、特務三佐のお好きなように」
 自分たちはどう見えているのだろう。仕立てのいいカジュアルスーツを身に着けたガエリオとラフな格好のシン、そして身の丈に合わない格好をしていると思い込んでいるアイン。借りたスカートのウエストが入って良かったと心底安堵したのは一生の秘密だ。
「そうか?まったく、お前は欲がなくていけない。プレゼントを探すのも一苦労だ」
「そんな…これ以上のご厚情を頂くのは心苦しいです」
 軍務中に付き従うのと同じ位置で歩き続けている。子供の様な顔をして笑いかけられると胸が苦しくなった。火星の貧相な栄養状況でよくもまぁ育ったものだ、と散々からかわれてきた胸元が入るシャツを選んだと思ったのだがサイズが合わなかったのだろうか。実際に見たことはない地球の空はきっとこんな色をしているのだろうと思わせる薄い青の瞳が細められる。
「あっ、大道芸をしているみたいですよ。あれくらいなら俺たちでもできそうだけ、ど…」
 普段よりもゆっくりとした歩調であるく上官につき従いながら隣を歩いているシンにも気を配っていると、道が湾曲し開けた場所の隅で玉乗りを披露していたピエロを目にとめたシンが弾むような声を発したのだが言葉尻が吐息に消えて行く。
「大佐…?」
 プレイベートと言えど抜けないきびきびとした足音が不意に途切れ車道を挟んだ向こうを凝視したシンが足を止めた。囁き声は確かにアインとガエリオの耳に届き二人もそろって立ち止まる。
「大佐…シャア大佐!!」
 車通りの多い通りの向こうに向かって声を張り上げたシンに驚きアインは目を凝らす。通りの向こうもこちらと同じように人でごった返しシンの呼ぶ人物を見つけられない。
「なんでギュネイも連れずに…待ってください大佐!」
 苛立ったような声と共に走り出したシンの手を咄嗟に掴み制止する。聞いたことのない切羽詰った声にガエリオが目を見はって振り向いた。
「離せ!」
 乾いた音がしてアインの手が振り払われる。硬いブーツの底が模造された石畳を蹴り俊敏に走り出した背を見送るわけにはいかなかった。
「追うぞ!遅れるなよアイン!」
 短く了解の声を発し新品のスニーカーで地を蹴った。障害物であるはずの人波を器用にすり抜けるシンを見失わないように激しくはためく白いパーカーだけを目印に追いかける。
 逃走ではない、そうであるならもっとチャンスはあったはずだ。そもそも逃走する理由もない。ギャラルホルン、というよりもガエリオはシンを拘束しているわけではないのだから。
「いざとなったらそのジャケットの内側のものを使えよ」
 コンパスの差か前に躍り出たガエリオが追い越しざまに囁く声に短く了解の声を上げる。ジャケットの内側、掌にすっぽりと収まるサイズではあるがそこには黒々とした小銃を装備していた。
 落ち着いたブラウンのジャケットが視界を覆うが急に方向転換をして横断歩道を渡ったシンを見失う事はなかった。
 まだ少しもすり減っていないスニーカーの底がキュッと小さな音を立てアインも後を追おうと道路に足を踏み出し
「ばか者!こんなところで死ぬつもりか!?」
手首を掴まれ制止をかけられる。胴に回された力強い腕に引き寄せられ肩甲骨が上官の腹に当たった。目の前をクラクションを鳴らした車が走り去っていく。顔を上げれば信号の光は赤く点滅していた。
「もっ、申し訳ございません!」
 顔を青くさせ謝罪の言葉を叫べば頭上すぐ近くで小さなため息が聞こえる。
「いや、いい。シンも止まったようだしな」
 頬をくすぐるガエリオの長い前髪、上背のある彼にすっぽりと抱き込まれるような形になっていて青ざめていた頬が今度は仄かに赤く染まった。
 立ち止まったシンは金髪の男の手を掴んで制止していた。薄い肩が激しく上下しているのを見るのは初めてだ。男の容貌はサングラスでよく見えない。ただ、ガエリオより劣るとはいえ長身で体格のいい体をしている事だけは分かる。
 ほんの少しの時間だった、男が手を上げて歩み去って行く後姿にシンが頭を下げ振り返る。ぎょっとした顔をしていたが当然だろう、アインは未だにガエリオに抱き込まれていたのだから。
 ちょうど青に変わった信号にシンが小走りで戻ってきた。
「ボードウィン特務三佐、衆目のあるところでそういった行為はどうかと思うんですが…」
 謝罪もなく、口を開いたシンの言葉にアインはぽかんと口を開けて言葉を失いガエリオは一瞬カッとなったようだが両手でアインを支えているため手を出すわけにもいかず、ただ胴に回された腕に力がこもった。
「すいません…。上官に似ていたので追いかけたんですが、人違いでした」
 ばつが悪そうに頭を下げたシンに怒りの言葉をなんとか飲み込んだのだろうガエリオはアインを支えていた腕をとき手を取って体勢を整えさせる。
「そういう時は先に言え。まったく、アインが車道に飛び出すところだったぞ」
 シンは、ひとりだ。ギャラルホルンの所属ではなく、この世界の人間ですらない。寄る辺のない心細さはアインにも覚えのあるもので、素直に謝るシンに対して何かを言う事は出来なかった。例えばこんな雑踏でクランク二尉に似た人物を見かけたらアインだって走り出してしまうかもしれない。
 この尊敬する人の腕を振り切っても。
「そろそろ時間か。最後にケチがついたがまぁ良いだろう。艦に戻るぞ」
 腕時計を見て口を開いたガエリオは軍人の顔をしている。シンとアインは反射的に敬礼を返し、苦笑された。


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