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ずいぶん前に頂いていたカフェパロカミシンちゃんです。くっついてないです。








 ぐわんと脳に響くセミの鳴き声を聞きながら顎から滴る汗をぬぐった。タオルなんて気のきいたものは持ってきていない。
「コンビニ寄ろう、アイス食べたい」
ぐったりしたカミーユが隣を歩くシンに声をかける。
 終業式を終えた本日めでたく夏休みに突入した。とはいっても二人とも帰る故郷もなくバイトと家事の往復になるのだろうけれど。
 殺人的な昼の暑さの下でオアシスのようなコンビニに駆け込んでほっと息をついた。キンキンに冷えた店内は火照った体を急速に冷やしていく。
「あ!俺財布忘れたんだった…」
 はっとして鞄を覗き込んだシンが肩を落とした。そういえば、今日は二人ともバイトだから夕飯の準備はいらないなと買い物の用意をしていなかったはずだ。昼ごはんは冷蔵庫の余りで炒飯でも作るのだろう、シンが。
「パピコ買うか、財布にやさしいし」
残念ながら給料日前のカミーユの財布にもそれほどお金は入っていない。アイス二つくらいと言ってはいけない、食べ盛りの男子高校生二人分の食費はばかにならないのだから。
 アイスボックスから他のものより多少大きな袋に入ったパピコを取り出して速足でレジに向かえば小銭の一枚くらい入ってないかと鞄を漁っていたシンが慌ててついてきた。
 店内で食べるわけにもいかず冷えた空気を惜しみながらむっとした熱気の中に足を踏み出す。再び吹き出る汗に辟易しながら豪快にアイスの袋を破った。
「アイス半分こって彼女かよ!」
笑いながら受け取るシンに嫁みたいな事をしておきながら今さらか、などと言った日には昼食がなくなる。
 カミーユは賢明にも黙ったまま吸い口に噛みついた。
「アイスうめー、けどあっついな」
火照っているからだろう真っ赤になった唇がパピコを咥えるのを横目にとらえながら晴れ渡る空を見上げる。遠くに入道雲が見えるので一雨くるかもしれない、洗濯物は無事だろうか。
 はー、と息を吐きながらシャツの襟元を動かし風を送るシンを視界に入れないようにと思うのだがなかなか難しい。日焼けしにくい体質だという真っ白な喉が汗に濡れててらりとひかった。
「カミーユ顔が真っ赤だぞ!熱射病じゃないよな?」
呆けていたようで骨の細い肉付きの悪い掌が額にのばされる。汗を気にもせず触れる手は思いのほか冷たい。
「熱はないみたいだけどさっさと帰ろうか。俺ものぼせそうだし」
無慈悲に照りつける太陽を見上げてシンがうんざりしたようにため息を吐いた。のけぞった喉仏に汗が伝う。喉を鳴らして半分以上溶けかけたアイスを飲み下した。







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