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ドリアさんリクのクワシンです。大尉は独占欲強そうだな・・・。





 破界事変の後、自分たちの世界に帰る術をもたないZEUTHメンバーはそれぞれ自分たちの理想のために各地へ散って行った。
 その中でも地球連邦、そしてザフトに所属していた所謂職業軍人と分類されるメンバーはOZに身を寄せている。彼、クワトロ・バジーナもその中の一人だ。
 彼は今唐突に言い渡された非番に戸惑いを覚えながらも街へ車を走らせている。オーバーワークだったとは思わない。世界は未だ混乱の渦中だ。だが組織に所属している以上は上官命令は絶対だった。
 仕方なく自室で書類の整理でもしようかと思っていたのだが察知したトレーズにより派遣されたシンとカミーユが朝からやってきて部屋を追い出された。それはもう鮮やかな手並みで。作戦行動における彼らの迅速で的確なチームプレイはこんな時でも発揮されるらしい。
 思い出してため息とともに苦笑をこぼす。せめて彼らのうちどちらかでも被せてくれたならもう少し暇のつぶし方も考えようがあったというのに。
 車から降りて持たされた地図を広げる。このあたりが彼らの息抜きの場なのだろうか。アムロからついでにこれ買って来てくれよと無遠慮に渡されたメモを見る。今度は何を作るつもりなのだ、補助ISCがこんなところで簡単に手に入るかと頭を抱えた。
 同様に非番を言い渡されたアムロは嬉々として部屋にこもった。カミーユの怒声にもシンとファの嘆願にもちっとも揺らがず。下着一枚で端末となにかの機材に向かうアムロは輝いていた。
 さて、と気を取り直して通りを歩く。渡された買い出しメモに書いてあるものはとりあえずそろえた。普通のマーケットに売ってないものはおそらくダメでもともとだったのだろう。一度書いて消したあとがある。
 客引きの声に適当に返事をし店を冷かして回る。あぁ、本当に年下の部下たちがいればもっと充実した休日になっただろうに。今度休みをよこすときは誰かと被らせるのと前もっていうようにトレーズに打診しなければ。クワトロは大人ではあったがこうして一人で過ごす休日というのにはあまり慣れていなかった。それは彼のライバルで、現在は同僚であるアムロにも言えることなのだろうけれど。
 ふとある店が目に留まる。正確にはショーウィンドウに飾られている品に視線を奪われた。ふむ、と顎に手をやり財布の中を思い出す。普段そうキャッシュを持ち歩かないがなんとかなるだろう。頼まれた買い出し品を片手に抱えなおし店の扉をくぐった。




 当直の勤務が終わりシンはぐっと伸びをする。相変わらずデスクワークには慣れないし、周囲の視線は好意的なものばかりではない。ガンダムのパイロットというのはそういうことだ、この世界では。カミーユはキラと共に開発部の方へ出かけている。ルナマリアとファも今日は別部署へ応援に行きそのまま上がるらしい。いつもは上司たちが座っているデスクを見て整理することもないなと判断したシンは常より少し早いがそのまま宿舎へ戻ることにした。
 もとの世界ではコーディネイターということで悪感情が向けられることも少なくはなかったがこちらの世界で向けられる視線とは少し違う。正しく異物なのだろうと実感する。色素の薄い肌と赤い瞳そして黒い髪、天然ではありえない配色に向けられる奇異の視線。せめてキラやアスランのように顔立ちはともかくとして他は普通にもいるような色であればよかったのにとルナマリアと苦笑したのも記憶に新しい。
 面倒事を起こす前にと速足に外に出る。夕暮れにも少し早い時間にそういえばと朝送り出した上司を思い出した。充分に疲れをとって来てくれればいいのだが出かけにアムロにメモを押し付けられて眉間にしわを寄せている姿を思い出してふきだす。
「随分と楽しそうだな」
気配もなく背後からかけられた声に飛び上がった。
「クワトロ大尉!もうお帰りだったんですね」
振り返れば片手に大荷物を抱えたクワトロが微笑を浮かべて立っている。コードの飛び出している荷物はアムロに頼まれたものだろうか。
「あぁ、たまには悪くないものだな」
どうせ同じところに帰るのだからと手伝いを申し出れば紙袋を一つ渡された。
 正直無理やり送り出したクワトロの機嫌がどうなっているか少しばかり心配していたのもある。彼が八つ当たりじみた怒りを表面に出すとは思えないが自分の意に沿わないことは嫌がりそうだ。並んで歩きながら話をするクワトロの表情は穏やかですこし安心する。
「そうだ、少し荷物を持ってもらっても構わないか?」
思い出したかのように足を止めるクワトロに大丈夫ですよと答えて荷物を受け取る。ずっしりと重い紙袋の中身はほとんどがICチップであったりコードであったためクワトロ自身の買い物はしてないのではないだろうか。
 最初にシンに渡された紙袋の中から何か取り出したクワトロは上機嫌でシンの背後に回った。失礼、と言いながら首に手を回され逞しい腕がシンの首元をかすめる。ふわりと微かにコロンが香り知らず身を固くした。
 嫌なわけではない、ただ緊張する。
「た、大尉・・・?」
ふ、と微かに笑った吐息がうなじにかかる。かたく目を閉じて身をすくめた。
「取って食うわけでもない、そんなに緊張することもないだろう」
首元に違和感、そしてクワトロが離れるのを感じてシンはそっと目を開けた。さらさらとしたひも状の何かが制服の中、首に巻きついている。
「君にあげよう。今日私を送り出してくれた礼だ」
かなり首に近く巻きついているようで下を向いても何が巻かれているのかわからない。微かに金属のかすれる音がしたためアクセサリーかなにかだろうか。そのまま制服を整えられ荷物をとられた。
「アムロの部屋まで付き合ってくれるか?」
かなり上機嫌に見えるクワトロにまあいいかといつものように首元をゆるめる。せっかく整えてもらっても息苦しいのは好きではない。わかっているのだろうクワトロも何も言わず、ただ笑みだけを深くして足を踏み出した。



「悪趣味だな」
一日部屋に引きこもりハロの改造をしていたアムロはひどく充足した休日を過ごしていたのだが夕方に訪ねてきた元ライバル、現同僚と荷物持ちにされていた可愛い後輩を見て眉をしかめた。
 買い出し品を受け取り一度部屋に戻って夕飯をとるという後輩を見送って呟く。ちくしょう、満足感でいっぱいだったというのにこの男は。
「似合うだろう?」
いけしゃあしゃあと。目の奥の鈍痛に耐えかねて眉間をもみほぐす。
 シンの首にはチョーカーがつけられていた。それも彼が制服を着崩すのを前提としたようなぎりぎり見えるくらいの位置に。サテン素材の黒いリボンは彼の白い肌によく映えた、それはもうしつらえたかのようによく似合った。
 あの子供が自分の意志で買って身を飾ったのならアムロはきっと笑顔で似合うと褒められただろうに。
「手を出すなよ?」
釘をさせばょとんとしてアムロを見るクワトロにまさか、と眉間のしわを増やす。
「何を言っている?」
無自覚だったとは。アムロは脱力してその場にしゃがみ込んだ。
 シンに注意を促しても無駄だろう。これはカミーユに頼むしかないかと痛みだした頭をかかえた。

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