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なんやかんやあってくっついたけど一線超えてないカミシン。カミーユは意地でもシンを種の艦には乗せないんだろうな。



「あ、痛っ!」
ぶつけた足が思ったよりも痛みを訴えかけシンは思わず声を上げた。格納庫は雑多な人と機材の音で静かではないはずだが不思議と響いた声にOSの調整に駆り出されていたキラが顔をのぞかせる。
「大丈夫?」
大丈夫ですよ、と返そうとしてぶつけた場所を確認しぎょっとして言葉を詰まらせた。軽くぶつけただけだと思っていた太ももから血が流れている。悪いことに軍服もほつれなどではすまされないほど破れていた。日に焼けていない白い太ももが露出することよりも出血を止めることが先だろうか、慌てて傷口を手で押さえる。
「誰か!タオル持ってきてください!」
少なくはない出血を見てとったキラが近くにいた整備員に指示を飛ばす。座ってと言われて地面に腰を下ろせばじくじくと痛みが増した。
「装甲の破片みたいだね、ちょっとごめん」
両手で傷口を押さえるシンの手をどかせ傍らに膝をついたキラが真剣な表情で見下ろす。そのままでは処置しづらいと判断したのだろう鉤状に破れたスラックスに手をかけ一気に引き裂いた。その間に救急箱とタオルを持ってきたらしい整備士が駆け寄ってくる。
 染みるよと前置きされ傷口に過剰なほど消毒液が吹き付けられた。息を詰めて耐えると患部にタオルを押し当てられる。
「押さえてて」
ささやかれた言葉に大人しく従うと膝裏と背に手を差し込まれ軽々と持ち上げられた。そう大柄でもないキラに持ち上げられ目を丸くするシン、同様にキラも驚いた表情をしている。
「キラさん汚れますし、俺自分で歩けます!」
正直歩ける気はしないのだがどうにも落ち着かず下ろすように言うがキラは聞き入れない。そのまま早足に格納庫を出てしまった。
「駄目、早くしないと感染症も怖いし。ところでシン軽すぎない?ちゃんと食べてるの?」
キラは優しいが頑固だ、これと決めたことは譲らない。現状シンも怪我人であったので暴れるわけにもいかず「食べてますよ!」と怒鳴るしか出来なかった。



 結果としてシンの怪我は縫うほど深いものではなかった。しばらく戦闘からは離れるよう指示はされたが絶対安静というわけでもない。
 太ももに白い包帯を巻き付けたシンが途方にくれたように血まみれになりスラックスの片側が完全に裂かれた軍服を見下ろす。残念だがこれはもう着れそうにない。
 困った。OZからもほとんど着の身着のまま飛び出してきたシンたちは替えの軍服を多く持っていなかった。タイミング悪くスラックス用の丈の長い制服は整備用の油にまみれてクリーニング中だ。
 ため息をついてクローゼットを開く。どうにもならない、民間人ではあるまいに私服でいるわけにはいかないだろう。意を決して奥にしまいこんでいたビニールから出されてもいない軍服を引っ張り出した。



 歩くたびにひらりと揺れる白いプリーツスカートを視界に入れてカミーユは一瞬目を疑った。二度見するだけでは飽きたらず目をこすり最終的に近寄って凝視する。
「言いたいことがあるんなら言えばいいだろ!」
シンが頬を染めながらきっと睨み付けてくる。
 ルナマリアと同型だろうミニスカートの軍服、すらりとのびる足はニーソックスで覆われてはおらず代わりに左足の太ももに包帯が巻かれていた。
「怪我したのか?」
いつの間にだろう。朝会ったときには怪我などなかった、哨戒任務に出たカミーユと違いシンは午前は機体の整備だったはず。
 スカートに言及されると思っていたのかシンは一瞬ぽかんとした顔をしてそれから決まりが悪そうにカミーユから目をそらす。
「ちょっと格納庫でぶつけて、今からキラさんにお礼言いに行くとこ」
頷いて返しながらも内心面白くはない。お礼を言うということはキラが手当をしたか医務室に連れていったのだろう。クワトロやアスランでなくて良かったというべきか。いいや良くはない。手当をしたと言うのならキラはシンの太ももを触った、もしくは見ただろう。医務室に連れていったのなら抱き上げてかもしれない。
 感謝すべきところだろうが面白くはなかった。カミーユはこの一年ほどシンにほとんど触れていない。もとの世界で地球連邦とザフトに別れ、この世界で再会してからは部屋をわけられた。あの頃は不安定な友人を支えると言う大義名分があったがシンはカミーユが知らない間にそれを乗り越えていた、喜ばしいことだが。
 そして二人の関係も変化したからだろう。無邪気に肩を抱き合うなんて、もう出来そうにない。
「カミーユ、聞いてるのか?」
生返事がばれたらしい。ずいと身を乗り出して覗き込んでくるシンをかわして格納庫の扉をくぐった。
 朝のけがをしたところを見ていたらしい整備士たちが方々から声をかけてくれるのに笑顔で答えるシンの隣に並んでキラを探す。カミーユの今日の予定は午前の哨戒だけでシンもやり残したデスティニーの調整を終わらせればフリーなのだという、早く用事を終わらせて休ませてやりたいという純粋な心配半分早く二人きりになりたいという邪念半分だ。
 誰か飛行テストでもしているのだろうかハッチが開いている。どうしても熱がこもりがちな格納庫も幾分か風通しがよく涼しい。
「あ、いたいた。キラさん!」
νガンダムのコックピットを覗き込んでいる白い制服はオーブのものだ足しか見えないがアスランのものとは違う色にシンが呼びかける。身体を戻して下を見るキラとコックピットからひょこりと顔を見せたアムロに手を振って存在をアピールするシン。
 ふとハッチの外に機影というにはいささか小さすぎる影が見えカミーユは首をかしげる。じっと目を凝らせばかつて自分が傾倒していたホモアビスに似ているように見えたがそれにしては機動性がありすぎた。見ているとどうにもこちらに向かって、そして格納庫に飛び込んできた。
 巻き起こる強風、視界の端にひらめく白。とっさにカミーユは近かった方の手でその布を押さえた。壁にぶつかる前に減速できたのだろうか衝突音がきこえることもなく風はすぐに収まる。ふと、自分は何を押さえたのだろうと手元を見下ろして言葉を失った。
 そうだ、視界に入るところにあった白い布、翻らせてはならないと強く思ったそれはシンのスカートだ。丈の短いそれを押さえたとなれば当然カミーユの手は柔らかいもの触れていた。
「うわああごめん!!」
慌てて手を離すが時すでに遅し。ぱぁん、と風船の破裂したような音が格納庫に響き激しい運動をするなと口を酸っぱく言われていたはずのシンは走り去っていた。
 あまりの勢いに体勢を崩したカミーユはその場に尻餅をつき呆然としている。
「平手でよかったな」
呆れたような声にふり仰げば降りてきたアムロが面倒くさそうな顔をして見下ろしていた。カミーユに手を貸すようなことはせず強風の原因、飛び込んできたEXギアを装着したアルトに怒声を飛ばす。
 じんじんと痛む頬に何をやってしまったのか今さら思いだし手のひらに残る柔らかい感触に思わず生唾を飲んだ。
「反芻してるのはいいけど早く追いかけた方がいいんじゃないかな?一応けが人だしね」
降りてきたキラがあれなら怪我も大丈夫そうかな、など続けるのにはっとして慌てて立ち上がり後を追う。


 その後、しばらく出撃できなかったデスティニーにかわりZが鬼のような戦果をあげたとかあげなかったとか。


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