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無印Zからの派生で誰も救われないCCAルートです。カミーユは精神崩壊してます。
書きたいところだけ書いたので短いシーンの詰め合わせというか、すいませんCCAが手元にないんです・・・。

若干クワシン要素ありです。




 青い星を横目にアクシズが崩壊することを確認したシンは軋み歪んだ機体を這いずらせて最後のあがきに入った。目の前では驚きに固まるジャスティスが中空で伸ばした手をそのままにシンに何かを訴えていたが耳なんてとっくの昔にいかれている。ノイズ混じりの声は泣いているようにも聞こえた。
 あぁ、悪いことしたな。





 遠目で馬と追いかけっこをするジープを発見し何をしているんだと呆れ飛び掛かられたのを見てギュネイを押しのけブースターを踏み込んだ。
「シン!?」
予想はしていたんだろう。それでも驚愕にまみれた声はシンの顔を少しだけ歪めさせる。銃を構える手は微動だにせずアムロの視線を受け止めた。
「お久しぶりですアムロ大尉。早速ですけど退いてもらえませんか」
お互いに銃を構えている。だがアムロの銃の腕前はMSに乗った時とは比べ物にならないお粗末さなのでシンはあまり気にしてはいない。アムロが一発でシンの頭蓋を吹き飛ばすことなど不可能だと知っている、その一発の間に自分は彼の銃を撃ち落とせるだけの技量があると自負もしていた。頭蓋を吹き飛ばされなければ防弾仕様の軍服にはそうダメージは通らない。
「シン、お前は何をしているか分かっているのか?」
背後でシャアがうかがっていることを知っている。知っていてシンは小さく笑った。
「わかってますよ」
撃鉄を引き上げる。アムロの銃は少女の手によって叩き落されシンの放った銃弾はジープのタイヤを打ち抜いた。
「退くぞギュネイ!大佐、連れて行くんですね?」
少女とシャアが機械の手のひらに乗り込んだことを確認しもう一発無事だった方のタイヤに狙いを定める。過たずジープを走行不能にして下ろされたアンカーにつかまった。
 アムロが叫ぶように名前を呼ぶ。シンはやはり顔をしかめるだけで銃をホルダーに仕舞った。








 シュプレヒコールが基地内を埋め尽くしている。熱狂的なその声に背を向けるようにしてシンは愛機の格納庫に向かう。シャアに与えられた軍服はザフトでは副官相当の色に値する黒だった。赤は彼の色だから。
 襟元も、袖口もすべて漆黒に染め抜かれた専用の軍服は小柄なシンをいっそう華奢に見せたがそれをシンに指摘する人間はいない。ふと、もしここにZEUTHの誰かが、彼がいればという考えが頭をよぎり足を止める。
 シュプレヒコールが聞こえる。不意になにもかもぶちまけてしまいたくなり踵をかえしたが一歩も進めることはなかった。小さくため息をはいて再び格納庫に足を進める。泣いて、ぶちまけて、縋り付いても彼は止まりはしないのだろう。少しだけ困ったように眉を寄せて、それからシンの頭をその大きな手で撫でて抱き寄せる。そうされてしまったらきっと彼の道具に成り下がるしかないのだと知っていた。
「ジーク・ジオン」
借り物の理想に呟いた声が反響する。中身のない言葉は虚しく廊下に響いた。
 早く行かなくては、定時連絡がこなければ彼らは困るだろう。







 アクシズでの戦端が切って落とされる。だが前線で一番に出てくるだろうと思われた蝶のよう翅をもつガンダムは確認されていない。最大限警戒しながらアムロは隊のパイロットたちに指示を出し続けた。ZEUTHのメンバーは散り散りで、地上に残ったものや再び次元震に巻き込まれ消息が分からないものもいる。セツコがいれば、あるいはと考え頭を振った。
 余計な事を考えて生き残れるほど甘い場所ではない。甘い男が相手でもない。なんとしてでもブライトたちを送り出しそして阻止しなければならないのだから。
『アムロ大尉、シンのことは・・・』
不意に通信が入る。戸惑いがちにかけられた声はシンのかつての上官のものだ。
「余計なことは考えなくていい。シンは敵だ、少なくともシャアを俺から庇って銃を向ける程度にはな」
あてるつもりはなかったようだが。その一言をあえて言わないまま沈黙するアスランに持ち場に戻るように諭す。
 MIA扱いになったと聞いていた。同僚も恋人も失って最後に友人の心を連れて行かれたシンがそれでもザフトに居続けることはできなかったのだろうと無理に納得して違和感を押し殺していた。だがきちんと探してやるべきだったのだろう。
 アスランは確かによくできる兵士だがシンにとって最良の上司ではなかった。ザフトにキラが出向いたという話も聞いていたが地球連邦の、それもたかが大尉に何ができるのかと。なんでもしてやるべきだった、できることは。
 戦闘は激化していくばかりだが一つ希望が生まれた。ブライトたちはうまく内部に潜入したらしい。だが同時に厄介なことも増えた。沈黙していたデスティニーが禍々しいほど美しい翅をいっぱいに広げ戦場に飛び出してきたのだ。自身は因縁の相手で手いっぱい、そしてもっと悪いことにシンが飛び出してきた辺りはザフトが当たっていた。
 かつての僚機を打ち落とし正義の名を冠するガンダムに向かって一直線に飛んでいくシンを見てアムロは奥歯を噛む。
「何故だ!なぜあの子を使った!」
憤りを通り越してあきれすら感じる。モニターの端で連絡が入ったようだがそれに答えられる余裕もなく赤い機体に向かって発砲した。
『使ったわけではない。彼は自分の意志で私のもとへ来たのだ!知らないだろうアムロ』
かすりもしないビームライフルにいら立ちファンネルを飛ばす。
『硝子球のような虚ろな目がどれほどの絶望を映していたことか!!』
いくつか撃ち落とされ距離をとる。蝶の機体を探す余裕などない。
 対するシャアも多少の焦りは感じていた。手筈と違うのだ、デスティニーは初めからアムロやキラに対するはずだった。それが居ないどころか相性が悪いどころではにアスランに一直線に向かっているのだから。先ほどから何度も通信を飛ばしているがシンが応える様子はない。
「知らないだろうな・・・私とて知りたくなど無かった」
呟いた言葉がインカムに拾われることはなかった。
 同じではないが似た悲しみを抱えているのだということはわかっていた。それでも無理やり笑顔でザフトに戻りますと言った彼を、袂を別つ決意をしたシンを破滅に向かう道に道連れにするわけにはいかないと手を離した。離すべきではなかったのだろう。フレンドリーファイアなどではない、明らかに撃墜目的で放たれた攻撃から辛くも逃げ回る蝶を発見できたのは運が良かったとしか言いようがない。
 デスティニープランの体現者、あるいはデュランダル議長の懐刀とやり玉にあがることは容易に予想できていたはずだったのだから。
「彼は私の理解者にはなろうとしない。だがそれでいい」
視界の端に燐光の軌跡。そしてアクシズに走る光の断裂にシャアは言葉を失った。





『このっ――かや―う!!』
機体ダメージはとっくにレッドゾーンに入っていてジャスティスに敵うはずがないなんてことはわかっていた。無理やりに突破してアスランを引きずり出せればそれでよかったのだがこの状態は少しまずい。
「脱出するつもりだったんだけどな」
ひしゃげたフレームはもう開きそうにない。強かにぶつけたヘルメットは割れていたしパイロットスーツもところどころ傷が入っていた。
 微笑んでシンは分離したアクシズの未だ地球に向かって落下をしている前部にしがみつく。アスランが背後で手を差し伸べているがそんなものはもう遅すぎる。認めたくはないがシンがアスランを必要としていた時はあった、あったはずだが彼は気づかなかった。
 そしてそれがすべてだ。
「俺が殴られても、犯されても気づかなかったくせに」
それでも、小さく良心がとがめる。アスランの責任ではない、ただ愚かだった自分が悪いのだから。勝手な期待を押し付けて失望するなんてどうかしている。
 打ち付けた体が痛い。せき込んで、呼気に混ざる血にもう少しだけもってくれよと願ってちらりと振り向く。ジャスティスは手を差し伸べたまま戦闘宙域に戻ろうとはしない。心なし近づいてきているようなアスランに威嚇するようにバルカンを撃ってアクシズに潜り込んだ。





 半分に断裂したアクシズだったがブライトたちの使った火薬が予想外に強力だったらしい。このままではこの大きな破片が地球に落ちてしまう。いまからでは破砕作業も間に合わない。
『私の勝ちだな、アムロ』
勝ち誇るような声は出なかった。シンはこの男とどんな関係を持っていたのだろう。オールドタイプでもニュータイプでもない、生まれながらの強化人間といっても差し支えないだろうコーディネイター、その中でも異質だった少年。
「たかが石ころひとつ!ガンダムで押し出してやる!!」
諦めるわけにはいかない。
「あの子は、堕ちたか?」
ささやくような声。答える余裕などない。熱暴走を始めそうなくらいジェネレーターを稼働させていく。
『堕ちてません、まぁたぶんもう長くもないですけど』
ノイズだらけで聞き取りにくい声。それでも確かに聞こえる少年の声にアムロは目を見開いた。同時にミノフスキー粒子の濃度が下がってきたのかブライトからの通常回線がつながった。
『アムロ!そこから離脱しろ!!そいつはもうすぐ爆発する』
信じられない。
「そんな馬鹿な、もう爆薬などないはず」
はっと息をのむ声が聞こえた。成り行きがわからずアムロは赤いコックピットを押し付けたまま動けずにいる。
『アムロさん、その人連れて行ってあげてください。まだその人必要とされてるんです』
小さく笑った気配。
「何故だ・・・何故だ!」
どうしてこういう時にニュータイプの力というのは働いてくれないのだろう。流れてくるのは戦場の悲しみ、苦しみ、それから目の前の男の絶望だけだ。
『俺が、ステラとカミーユのいる場所を壊すわけない』
声に混じるノイズと違う雑音。喉がおかしいのか、まさか肺をやってしまったのか。
 絶句するシャアに吐息で笑うシンに余人の入り込む隙はない。アムロは静かにコックピットをアクシズから引っこ抜いた。
『大尉、あんたにはまだ、明日が』
ぶつりと途切れた通信、かろうじて動くブースターでその場を離脱する。視界の端でちらちら動くメッセージには【情報提供者はシンだった】と簡潔に表示されていた。みていれば何か、変わっただろうか。
 おそらく、すべて根回しはすんでいるのだろう。デスティニーはフリーダムと開発系を同様とする機体だ、当然、ジェネレーターとして核ないし核に近い出力を出せるものをつんでいただろう。
 激しい閃光と衝撃波。かろうじて動いていたブースターも止まり大きな荷物を持ったνガンダムは制御不能に陥る。だがデブリにぶつかる前に高速で飛翔してきた赤と青の機体に支えられる。
『アムロ大尉、無事ですか?』
応える気力もないがあぁ、と小さく呻く。回線が開いているのか小さく嗚咽が聞こえる。手の中の男のものではない、もっと若い声だ。
「キラ、こいつをネオジオンの戦艦に送ってくれ」
フリーダムなら、まだ動くだろう。キラは少しだけ迷って了承した。
『情けをかけるのか、アムロ』
思っていたよりも冷静な声だ。いや、そういう男だったか。口も開きたくない位疲れているが誤解されたままなのも腹が立つ。
「馬鹿を言うな。今すぐにでも殺してやりたいけどな」
今まで何人も若い命を見送ってきたというのにまだ、なのだろうか。
「シンが、お前を生かしたんだ」
アムロさんと言った。それから大尉と、だから最後の言葉は自分にあてたものではない。あえて言ってやるほどの同情をするつもりはなかった。




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